Column コラム
日本盲導犬総合センター(富士ハーネス)佐野智浩センター長
ワンちゃんケア
このコラムでは動物に関わっていらっしゃる方にお話を伺い、そのお仕事や思いを紹介しています。
今回は、公益財団法人日本盲導犬協会、日本盲導犬総合センターの佐野智浩(さの ともひろ)センター長に伺いました。
富士山の麓、白糸の滝にほど近い場所に位置する「日本盲導犬総合センター」は “盲導犬の里 富士ハーネス”という愛称で親しまれ、
盲導犬の一生をトータルにケアすることを目的とした、国内で初めての施設です。
◆ 盲導犬との関わり、そのきっかけを教えてください。
佐野センター長: 子供のころから動物や生き物が好きで、動物園の飼育員になりたかったんです。実際に飼育員をしていました。
30代の頃、富士宮市に当センターが開設することを知り、動物に関わったこれまでの経験に、新たに福祉の仕事が加わる業務に
是非挑戦したいと思い転職しました。
最初は普及推進部に配属され、盲導犬への理解を啓発する様々な事に携わりました。もちろん最初は不安がありましたが、
自分を試してみたいという気持ちもあり、日々の業務を通じて自分の中にひとつづつ引き出しを増やしていくようなイメージで、
盲導犬とそれを取巻く様々な事柄について学びました。
◆ 貴センターは2006年に開設して今年で14年目ですが、以前と比べて何か変化はありますか?
佐野センター長: 1997年に神奈川訓練センターが開所して以来、2001年に仙台訓練センタ―、2006年に当センター、そして2008年に
島根あさひ訓練センターが開所し、盲導犬育成規模が拡大しました。
訓練に関して、動物福祉の精神にのっとって行っていることに変化はありません。しかし、職人気質と言いますか、経験をもとに訓練することが依然は多かったように思います。今は科学的データを用いて体系的に訓練しています。そして、褒めて育てています。上手に出来たら餌をあげるのではなく褒めます。褒められて嬉しい。嬉しいから訓練が楽しい。そんな風に訓練は行われています。
◆ 貴センターは一般のお客様を予約なしで迎えていらっしゃいますが、盲導犬訓練施設としてこれは珍しいのではないでしょうか?
佐野センター長: 日本唯一です。開設当時は世界でもあまり例が無かったと思います。当センターは、盲導犬の出産から引退後までの
一生をトータルにケアするすることにより、安定的な盲導犬の育成頭数を確保するための施設です。そこにレジャー的要素を取り入れ、
情報発信すると同時に盲導犬に関する啓発を行っています。各種イベントも開催していますが、そこでは前職の動物園勤務経験が活かせていると思います。
◆ 盲導犬の犬種に、ラブラドール・レトリーバーが多いのはなぜでしょうか?
佐野センター長: 性格と体の大きさが盲導犬に適しているからです。人懐こい性格で、人間と一緒に作業することが好きです。彼らの穏やかな外見は周りの人にも不安感を与え難いです。ラブラドール・レトリーバーの体重はおおよそ25kgです。盲導犬として活動するには、必ずしもパワフルでなくても良いですが、人間をリードする役目もあるので、丁度良い大きさと言えます。
◆ 訓練の結果、盲導犬になれなかった犬はどうなりますか?
佐野センター長: 訓練を行ったけど、性格が盲導犬に向かないと判断されたり、身体的に懸念がある訓練犬は、進路を変更することになるので「キャリアチェンジ犬」となります。
彼らはそれぞれの性質に合った環境で暮らすことになります。例えば、啓発活動の場でデモンストレーションなどを行う盲導犬PR犬や、手足が不自由な方のサポートをする介助犬として活躍することもあります。また、キャリアチェンジ犬が天寿を全うするまで、家族の一員として迎え入れてくださる「キャリアチェンジ犬飼育ボランティア」に譲渡する仕組みもあります。
◆ 佐野センター長が大切にしていらっしゃることは何でしょうか?
佐野センター長: 「出会い」を大切にしています。カッコつけるわけではないですが、「一期一会」という言葉が好きなんです。
もともと話好きというのもありますが、来館してくださっている方に声を掛けます。どこからいらしたんですか?とか、来館のきっかけを伺ったりします。犬を連れての来場も出来ますので、犬好きの方々と情報交換もします。
◆ どうもありがとうございます。
日本盲導犬センター 富士ハーネスのすぐ近くに「白糸の滝」があります。「白糸の滝」は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として世界文化遺産に登録されています。